室堂~雄山~大汝山~富士ノ折立~真砂山~別山~劔沢小屋~劔岳~地獄谷~ミクリガ池~室堂
夏の立山連峰縦走の記録
今回の登山隊は5人編成
北アルプスの北部に聳える立山連峰
古くから山岳信仰の山として有名な山である
今回の初日の行程は立山連峰の三つの主峰「立山三山」
雄山(3015m)大汝山(3003m)富士ノ折立(2999m)に加え、真砂岳(2861m)別山(2880m)
の5つの頂きを踏み剱沢テント場にベースキャンプ設営
翌日は登山をやる者の憧れ、劔岳への挑戦を経て室堂に下山予定
アプローチ
この立山連峰は自然保護の為長野県側の扇沢より先はマイカー(タクシー含む)進入禁止地域となっており、扇沢からトロリーバス、ケーブルカー、ロープウェイ、そしてまたトロリーバスを乗り継いで立山に入らなければならない
朝一番の扇沢駅発トロリーバスが7時前後で立山駅着が1時間半後
しかも休日ともなればその朝一のトロリーバスに乗る為に長蛇の列ができる
その面倒くさい入山過程を回避する為夜22時新宿発~翌朝7時立山駅室堂バスターミナル着という夜行バスを手配した
仕事を終えた金曜の夜22時
新宿駅を都庁の地下にあるバスターミナルに向け16kgの80ℓザックを背負い登山服で歩く
周りは飲み会帰りの大騒ぎしてるサラリーマンや仲睦まじく寄り添う恋人ばかり
その中を黙々とあるく自分はかなり浮いている
今回の山行行程
当初は剱岳山荘テント場と、雷鳥沢テント場で2泊3日の行程だったが思いの外天候に恵まれ体力も続いたので2日目は一気に室堂まで降りて1泊2日に短縮した
しかしこのコースを1泊2日でこなすのは相当な体力が必要となるのでお薦めはしない
2泊3日が妥当であろう
立山三山
翌朝7時過ぎ
室堂バスターミナル着、座席が狭くよく眠れなかった
駅から出たとこで準備を整える
室堂で既に標高2450m
7:45出発
この素晴らしい景色を堪能しながら歩く
しかし装備重量は15kg以上
登り坂では息が弾み体力が奪われる
急坂を一気に登り雄山に辿り着く
雄山登頂
雄山からは稜線歩きで大汝山を目指す
気持ちの良い稜線を歩き続け大汝山に辿り着く
大汝山登頂
ここからも稜線歩きが続く
多少の登り降りはあるがそこまでキツイものではなく余裕を持った山歩きとなる
富士ノ折立に辿り着きピークハント
富士ノ折立登頂
これで一般的に立山と呼ばれる三つの頂きはすべて踏襲
体力に余裕があったので少し遠回りだが真砂岳と別山も登って行く事にする
お昼を少し過ぎたが時間が少し押している
昼食は取らずに行動食を齧りながら休み無しで歩き続ける
流石に脚も疲れてきているとこに加えてこの日差しである
森林限界を超えている為背の高い植物は一切ない
直射日光をくらい体力が奪われていく
真砂山登頂
朝から歩きっぱなしの為、隊のメンバーにかなり疲労の色が濃くなってきた
早いとこテント場に着きたいものだ
別山登頂
やっと本日最後となる五つ目の頂きを踏襲
ほっと胸を撫で下ろすメンバーの眼前には…
神々しく聳える劔岳があった
手前から一服劔
劔岳の前衛を務める前劔
そしてその後ろに堂々と居座る劔岳
明日は必ず挑み登頂するぞと胸に思う
劔沢キャンプ場
本日最後の行程として別山から40分ほど剱沢キャンプ場まで降りである
降りだと思って甘く見ていたが歩き出せば本日一番つらいと思える道のりになった
急勾配なざれ道で既に限界を超えていた足にかかる負担が半端じゃない
もう踏ん張りの利かない足で無理やり踏ん張りながら一歩一歩降ってゆく
この日既にテント装備、大休止無しで7時間ほど歩いた
もう限界は超えている
やっとテン場がすぐそこに!
転がるようにテン場に辿り着いた隊員たちはフラフラしながらもテントを設営する
テント設営が済み今日の仕事が全部終わりあとはビールを呑むだけという事に歓喜する隊員
山小屋でビールの買い出し、500mℓのスーパードライが800円也
真夏であるがそこら中に万年雪が残っている
テン場は雪渓の真ん中である為天然の冷蔵庫でビールは常にキンキン!
明日挑戦する劔岳を眺めながら山岳食を調理しビールに舌鼓を打つ
今日1日の行程で疲労し切った身体とにアルコールが染み渡る
明朝は3時起きで劔岳アタックなので隊員は早めに就寝する
筆者はテントの中でしばらく小説『孤高の人』を読んでいた
夜半過ぎふと目が覚めテントの外を覗くと空一面に輝く星空が
いつも涙が出そうになるくらい感動する山の夜空
デジカメにはこの風景を納められないのが残念である
星空に見惚れながらも、かなり厳しくなると予想される明日の劔岳山行の事を思い少しでも体力回復をする為にまた寝袋に入った
明日はいよいよ劔岳に挑戦である
劔岳アタック
早朝3時起床
サブザックに必要な物を詰め込み準備ができたら朝飯だ
筆者の朝御飯は好日山荘で購入した山岳用どん兵衛
普通のどん兵衛と全く味が変わらず食した後のゴミはコンパクトに縮まる
これは常備品になりそうだ
3:45ヘッ電点けて山行開始
真っ暗闇の中足元をヘッ電の灯りで照らし歩く
いきなり雪渓を横切るので転ばないように注意だ
20分ほどで剣山荘に着く
劔岳はここが最後の水場になる
往復6時間ほどの道のりで水が切れるのは死活問題になる
飲み水は十分確保して行こう
剣山荘を出たあたりから日の出が始まる
雲海の向こうに徐々に浮かび上がる御来光
言葉にし難いほどの美しい光景だ
朝焼けの中一服劔を越えると前劔が姿を現す
遠目で見るより重量感があり、劔岳の前衛を務めるのに申し分ない迫力である
前劔は想像よりキツかった
数々の鎖場、ざれ道、酸素の薄さに襲われる
前劔の向こうに見える劔岳
待ってるがいい、必ずその頂きに立って見せる
5:30前劔登頂
ここで小休止
ここからは更に危険な道が続く
日本国内で「一般登山者が登る山のうちでは死亡事故の最も多い山」とされる劔岳
過去の登山に比べ段違いに死と隣り合わせを感じざるを得ない
特に前劔を超えてからはずっと滑落=死のイメージが付き纏った
それほど危険な道であった
いくつもの鎖場、梯子を超えついに劔岳の足元に辿り着く
その隊を待ち受けていたのは…
かの有名なカニノタテ這いである
垂直の壁を鎖と自分の体力だけを頼りに登る危険な個所だ
色んな劔岳のブログを見てると、この下から撮った写真は多いが登り途中の写真は少なかったのだがその理由はすぐに分かった
撮ってる余裕が一切ない!
途中2~3回
「らぁーーーく!!」という叫び声(落石を知らせる発声)と共に頭上から落石が!
ソフトボールくらいの大きさだけどもしも当たったらまず命は無い
登ってる最中次の足場が見つからず探してる瞬間も常に頭上落石に気を配りながら必死に登った
なんとかカニノタテ這いをクリアして、あとは急勾配な登りを登るだけ
キツイ登りが小一時間続くけど、さっきまでの様な命の危険を感じないから気合だけで登れる
そしてついに…
劔岳登頂
とうとうその頂を踏んだ
日本登山家たちの夢
日本百名山高難易度最高峰の頂を踏襲したのである
感無量だった
暫し登頂で休憩しながら絶景に見惚れる
身体はかなり疲労してたが、そんな事はどうでも良くなるような最高の気分だ
その景色をカメラに収めながらほんの少しの休憩を取ったら下山開始である
登山は降りるほうが危険、気を引き締めていこう
下山コース最難関
カニノヨコバイである
上りのカニノタテバイと同等の危険箇所である
慎重に降りていく
ピストンなので当たり前だが、登る時に超えた前劔を再度超えなければならない
体力が限界だ
ヘロヘロになりながら前劔、一服劔を超えやっと眼下に剣山荘が見える
無事劔沢テント場に帰還である
劔岳を踏破出来た事を噛みしめる
小休止5分を挟み、そこから雪渓を歩いて11時剱沢キャンプ場に戻る
隊員は全員体力が限界に近いほどバテていたが16時までに室堂まで戻れれば本日中に家路に着ける為テントを撤収し、即出発する
この段階で体力はほぼ残っておらず根性での徒行が始まる
室堂への下山
テント装備を背負い1時間の雪渓登り
既に山業開始してから8時間が経過している
誰も何も喋らずただ仲間に遅れないよう歯を食いしばって登り続ける
12時を過ぎた頃、後ろを振り向くと雲が出てきている
午前中あれほど晴天だった劔岳は既に雲に覆われていた
山の天候の変わり易さを噛み締める
遥か彼方に見える雷鳥沢キャンプ場
景色は素晴らしかったのだが、疲労と足の痛みでそれを楽しむ余裕がない
雷鳥沢ヒュッテを過ぎ、ロッジ立山連峰を過ぎる
この辺まで来ると室堂から徒歩1時間圏内なので、一般の観光客やそのお客さん目当ての施設が多々ある
地獄谷
硫黄の匂いがすごい
いたる所から煙が立ち昇り、凄い光景だった
(現在は噴気活動の拡大活発化により通行禁止)
ミクリガ池
ミクリガ池でこの時雷鳥を見ることができた
だが写真に収める事が出来ず悔やまれる
でも見れたのだから良しとしよう
室堂バスターミナル
15:00やっとの事で室堂バスターミナルに到着
3:45に歩きはじめてから11時間強
ご飯も食べず僅かな行動食のみで大休止も無く、劔岳をピストン
そこからテント装備を担いで3時間の下山を我ながらよく歩いた
隊員は皆健脚と言って差し支えないだろう
黒部ダム (おまけ)
帰りがけには黒部ダムを観光する
これも中々の迫力で良い思い出になった
扇沢に17時着、そこからタクシーで松本駅まで1時間半
スーパーあずさに乗って22時に帰宅
立山縦走五山踏破劔岳攻略
晴天にも恵まれ見事成功を収めました
隊員が誰一人怪我をすることなく下山できた事を山の神様に感謝です
今回は『立山縦走・剱岳攻略』レポの紹介でした
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